ちょっとまった!そのデザインでプリントしていいの?

オリジナルTシャツプリントに潜む法の侵害について

Tshirt.stへオリジナルプリントのご依頼をいただく際、写真やイラストのデザイン入稿をいただきます。
当店は、いただいたデザインが、著作権を含む知的財産権等を侵害していると判断したとき、ご依頼をお断りする場合があります。

では、どういった事が知的財産権の侵害に当たるのか?を簡単にご説明いたします。


(1)著作権を含む知的財産権ってどんな権利?


著作権とは
発明や創作によって生み出されてものを、発明者(創作者)の財産として一定の期間保護する権利のことを知的財産権と言います。
知的財産権の種類は、著作権・商標権・意匠権などです。
詳細なルールは、「著作権法」「商標法」「意匠法」といった各種それぞれの法律で保護されていますが、それらに共通する一貫した考え、「人間の知的創造活動の成果について、その創作者に一定期間の権利保護を与える」といった、知的財産基本法という法律で一括りに定められています。


(2)権利を保護する目的の他、新しい表現を創造するために


パクリは悪い
2015年に起きた東京オリンピックのエンブレム盗作疑惑があったように、一般的に「パクリは悪い」という認識は広がっています。
デザインを盗んだ、盗まれたという当事者の話だけには収まらず、SNSの拡散などで社会的信用を失う場合も起こりうる時代です。
オリジナルTシャツなどを作成される際、デザインを作成した本人ではなくても、発注や取りまとめ役の担当者など、実際に加工する当店を含め知らずに法を犯してしまう可能性もあるため、知的財産についての基本知識とそれを保護する意識が求められます。
企業のロゴマークを盗用してしまうなどの不正な行為を防ぐため、これらの知識が必要なのはもちろんですが、同時に法律に触れない(不正ではない)行為も知っておくといいですね。
例えば、著作権には時効があり、その作品の著作者が個人の場合、死後50年が過ぎると自由に使えるようになります。そういった時効を設けることで、永遠に作者の権利を保護するのではなく、新たに文化や表現を生み出せるように制定されています。


(3)著作権の基本


子どもの床の落書きであっても著作物
著作物の作者が持つ、その作品がどう利用されるかを決定できる権利。
著作物とは、「思想または感情を創作的(独自性/オリジナリティがあるという意味)に表現したものであって、文芸、学術、美術または音楽の範囲に属するもの」と定義されています。
Tシャツのデザインに使われるケースとしては、写真・イラスト・絵画・文章そしてフォントも誰かの著作物でなり、オリジナルを作成した著作者がいるはずです。それが子どもの床の落書きであっても著作物になり、その作者の子どもが著作者となります。
著作者は著作物をどのように利用するのか、独占的に決定できる権利「著作権」を持っています。
著作物を世の中に公開したり複製したり、改変するには著作権を持っているひとからの利用許可が必要となります。Tシャツに印刷する場合も複製利用にあたります。
許可なく他人の著作物を利用する事は著作権法の侵害となり、損害賠償から懲役まで厳しい刑罰を科せられる場合があります。


(4)著作権と商標権の違い


コピー商品
著作権と商標権はどちらもイラストやマークを扱うときに語られる権利であるため混同しやすいですが、この2つの権利は明確に違います。
著作権は登録は不要で、生み出されたと同時に自然発生する権利に対し、商標権は特許庁に出願・登録することで取得できる権利です。商標権は企業や団体の商品商標(トレードマーク)と、役務に使われる役務商標(サービスマーク)の2つがあります。商品の販売や役務の提供を継続すると、そこで使われる商標は広く知られることになり、品質や信用がブランドとして財産的価値になります。この財産的価値=商標を保護し、独占的に使用できる権利が商標権です。
ここでは触れませんが、Tシャツのデザインに使われるケースとして他に商号権・意匠権にも注意しなければいけません。


(5)「©️」「®️」「TM」マークが無ければ、自由に使っても著作権・商標権の侵害にならない?


東京特許許可局
©️(コピーライト)・®️(商標登録)・TM/SM(トレードマーク/サービスマーク)
これらのマークは日本では法的な効果は無く、表示をする義務は無いため、マークの有無による他人の著作物利用可否の判断はできません。マークの有無に限らず著作権者に利用許可を得る必要があります。
また、自分で作成したロゴなど、商標登録をせず®️マークを付けると虚偽表示として刑罰の対象になるのでお気をつけください。


(6)個人利用なら著作権侵害にならない?


個人利用
著作権法には「著作物は、個人的または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、使用する者が複製することができる」と書かれています。
具体的には、家庭内でテレビ番組を録画して視聴したり、子どもがアンパンマンの絵を描くといったことを指します。この範囲の利用を法で管理することが現実的では無いため、個人的または家庭内で利用(複製)する場合に限って合法と認めています。

ポイントは家庭内でという限定的なものであり、これらの利用(複製)はネットなどで家庭の外へ公開する事ができません。プリント加工を請け負う当店(他の業者も同じ)も当然家庭の外ですので、プリント(複製)を依頼する場合は、著作権侵害にあたります。
個人が家庭内で着るTシャツについては、どんな有名キャラクターやロゴであっても、ご自身によるプリントであれば合法(私的使用の範囲内)です。


(7)パロディやオマージュはどこまでOK?


贋作(コピー)
結論から申し上げますと、パロディ・オマージュ・盗作・贋作全て著作権侵害にあたります。

法律的には、日本の国内法でパロディは不正ですが、実際には著作権侵害は親告罪であり、つまり著作権者がパロディを行った者を訴えない限り罪に問われません。
例えば、アイドルグループのファン自作の推しメングッズなど、著作権者がその存在を緩やかに認めている場合があるのが現実です。
ただし、プリントをご依頼いただくお客様自身で告発されるリスクは常に考えていただきたいです。当店が明らかに不正・悪質と判断した場合、著作権の利用許可内容を明文化した書面の提出を求め、提出が無い場合はプリントのご依頼を辞退させていただきます。


(8)もうひとつ忘れていけない肖像権


許可なく顔写真を利用してはいけない
プリントのデザインとして人物の写真を使用する場合には、「肖像権」に留意する必要があります。
日本には肖像権を定めた法律はないのですが、タレントやスポーツ選手などの有名人の肖像には経済的価値があり、それを保護するパブリシティ権が発生します。有名人本人や所属事務所に無断で顔写真の入った商品を販売したり、配布するのはパブリシティ権の侵害にあたります。また、一般人の場合でも、「顔写真はプライバシーの一種であり法律上保護されるべき」と考えられています。社会通念上も、被写体自身の許可なく撮影されたり、公開するのは問題視されるので、人物の写真をデザインとして扱う場合は十分に注意してください。



引用元「プロなら知っておくべきウェアプリントのキホン」㈱ゲンダイ出版・刊





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